本年は医療と法に関する研究会を開催する予定です。昨年は漫画やイラストレーション、ピクトグラム(絵文字)について、いままでとは異なる利用法を検討し、その成果が得られました。
なお法は患者や医療者の権利を保護するためにもあります。医療者は患者の幸福を願って日々、活動しています。患者も医療者も人であり、生活があります。法は両者が幸福になるために存在していることを再確認する意味において研究会を開催したいと考えております。
憲法13条は幸福追求権について規定しています。これに基づいて健康権といった権利を解釈によって見出すこともできるでしょう。また、憲法25条1項からも健康権を見出すことは可能です。ただそれぞれの権利の性質には違いがあるといえます。
また、これらの条文から環境権という権利を導き出してはいるものの裁判所ではそれが認められない場合もあります。でもそれは環境権という名称に起因するものとも考えられます。環境権ではなく健康権であると考えた方が受け入れやすいのではないでしょうか。
さらに、そういった事柄だけでなく、研究者としての医療者という観点から、職務発明の在り方を考えなければなりません。とくに企業の従事者とは異なり、大学や大学院における研究者・教育者としての医療者の保護も検討しなければなりません。
法はすべての人が幸福になるために存在しているのです。
ただ、話の内容が少しそれますが、これからは動物や植物の保護のためにも法律を役立てねばなりません。あるクマ牧場では過去に、餌を与えられず飢えに苦しんだ熊たちが食物を求めて施設を抜け出し射殺されるという悲しい事件がありました。もしこれを人間に置き換えて考えればどうでしょう。危険な生き物だから駆除(この言葉自体不快であるといえます)するといった短絡的かつ残忍な考えは戒めるべきではないでしょうか。このような動物を保護するようにわれわれ人間は考え方を改めねばなりません。これからの法は動物や植物のために一層役立てねばならないものと考えています。
佐藤 薫